土壌の中には、天然の放射性物質であるウラン系列核種・トリウム系列核種やカリウムが微量含まれています。このため自然の状態でも地表面からは常に放射線が放たれています。土壌に含まれる天然放射性物質の量は土質により異なるため、観測局で観測される空間放射線量の平常値は地域によって違いがでます。
一般に花崗岩質の土壌には、天然放射性物質が多く含まれるため、福井県内では敦賀半島を中心とした地域で、平常値レベルが約0.06μSv/h前後と他地域に比べて高くなっています。
これに対し、大飯・高浜地区など粘板岩質や安山岩質の地域では、土中の天然放射能濃度が低いため、測定値は約0.03μSv/h前後と低くなっています。
観測に与える周辺土壌の影響は大きく、土木工事等により観測局近傍(周囲数10mの範囲)の土が入れ替わると、放射線のレベルに変化が生じる場合があります。
また、観測局周辺がアスファルトにより舗装されている場合は、大地からの放射線をさえぎるため、放射線のレベルは一般的に低くなります。
さらに、山などの傾斜地が近接している場合には、傾斜地から検出器に入射する放射線量が多くなるなど、地形による影響で測定値が高くなることもあります。
私たちの周りの大気にもごく微量ですが放射性物質が気体や固体(微粒子)の形で存在しています。大気中に存在する天然放射性物質の中で代表的なものがラドン222です。
ラドンは、土中に存在する天然のウラン238が長い年月をかけての壊変を経た結果発生します。ラドンは気体なので、一部が地中から徐々に大気中に移行します。ラドン222は、地中から絶えず供給されますが、3.8日の半減期で壊変していくため平衡状態となり、大気中の濃度は地域ごとにほぼ一定で推移しています。
一方、大気中を漂う固体(微粒子)の放射性物質は、主にラドン222が壊変して生じる核種(ラドン子孫核種)達です。ラドン子孫核種はいずれも半減期が短い(長いものでも約30分)ため、短期間に放射線を出しながら次々とその姿を変えていきます。
ラドンやラドン子孫核種など大気中に含まれる放射性物質の状況は、気象条件で大きく変化するため、空間放射線量の自然変動の主要因となっています。
ラドン222が変化してできるラドン子孫核種の微粒子は、通常、上昇気流などの大気の対流により上空にまで広く分布していますが、降雨時には雨滴に付着し、地表に落ちてきます。
この影響で、地上で観測される空間放射線量が上昇し、測定値は0.1μSv/hを超える場合もあります。
ラドン子孫核種の半減期は約30分であるため、雨が降り止んだ後、2時間程度で元の空間放射線量率のレベルに戻ります。
大気の状態が安定する夜間から明け方にかけては、大気中のラドン子孫核種が地表付近に多く溜まり、観測される空間放射線量が高くなることがあります。
空間放射線量の上昇分は、高いときには0.01μSv/hを超えることがありますが、太陽が登り地面が暖められると上昇気流が発生し、ラドン子孫核種が上空に拡散するため解消します。
季節による土中の水分量の違いのため0.00数μSv/h程度、空間放射線量率レベルに差が出る場合があります。具体的には、夏期に晴天が続き、土中水分量が低くなると空間放射線量率は高くなり、福井県のような日本海側では冬期は雪や雨が多く、土中水分量が高くなるため空間放射線量率は低くなります。この現象は土中の水分が大地からの放射線を吸収するために起こるものです。
また、冬期には積雪により大地からの放射線がさえぎられて空間放射線量率が低くなる場合もあります。